人為的要因による坪単価の変化
坪単価は、説明する人によって異なります。
具体的な例や、その背景について解説します。
1.本体価格のごまかしによるもの
坪単価 = 価格 ÷ 面積(坪) ですから、価格や面積を操作すると、坪単価は簡単に変化します。
まずは、価格操作です。
通常、注文住宅など請負契約を行う建物は、建物本体のみの価格について、坪単価を説明します。
全く同じ建物でも、建築地やお客さんの注文によって、発生する費用が異なるからです。
たとえば、
- 水道工事 ・・・ 既存の管が利用できる場合/道路の本管を取り出す必要がある場合
- 地盤改良工事 ・・・ 地盤の強度が十分な場合/軟弱地盤の場合
- インテリア ・・・ 発注しない場合/発注する場合
などです。
しかし、ローコストを売りにしている業者の場合、坪単価を安く見せるために、建物本体の一部を含めずに説明するケースが多々あります。
具体的には、バルコニーや収納設備などが、よく除外されて説明されます。
この背景は、とにかくローコストであることをアピールしたいがために、
「バルコニーや収納が無くても生活することは不可能ではないから。」という理由で、これらをオプション扱いとし、”本体”の坪単価を安く見せ、お客をごまかそう、という意思があります。
バルコニーや収納を除いた本体価格で坪単価を説明されたら、警戒して下さい。
一事が万事、坪単価だけでなく、ありとあらゆることが、嘘やごまかしである可能性があります。
2.面積のごまかしによるもの
坪単価 = 価格 ÷ 面積(坪) 、価格の次は面積です。
2-1.「1坪=3.3㎡」?
私たち建築・設計に携わる者は、1㎡≒0.3025坪あるいは1坪≒3.3058㎡として計算します。
ところが、1坪=3.3㎡として計算されることが、しばしばあります。
私たちにすれば、円周率を3で計算するようなものです。
たとえば、110㎡で、2,000万円の建物の場合、
1坪=3.3058㎡
で計算すると、坪単価は60万円/坪(四捨五入)になりますが、
1坪=3.3㎡で計算すると、坪単価は59万円/坪(四捨五入)になります。
この程度のことなら、あまり問題にはなりませんが、1坪=3.3㎡で計算する業者は、専門性を疑った方が良いでしょう。他の大切なことも知らない可能性があります。
※不動産会社・ディベロッパー、あるいは新聞雑誌・その他メディア、といった、不動産や住宅の専門知識に乏しい業者が、1坪=3.3㎡を使います。
2-2.not延床面積 but施工面積
面積のごまかしで最も頻繁に利用されるものは、この施工面積(せこうめんせき)です。
本来、坪単価は、延床面積で計算するのが一般的ですが、この坪単価の計算方法は、法律などで定めがあるわけではないので、好き勝手に操作されます。
前述の通り、延床面積にはバルコニーや庇、吹き抜け、玄関ステップなどは含まれません。
これらを含む面積を、施工面積といいます。
たとえば、延床面積120㎡ 施工面積140㎡ 建物本体価格2,000万円の場合、
延床面積で計算 : 2,000万 ÷ (120㎡×0.3025) ≒ 55万円/坪
施工面積で計算 : 2,000万 ÷ (140㎡×0.3025) ≒ 47万円/坪
こんなに差が生じます。
施工面積で計算するのは、坪単価を安く見せるためです。上記の場合、本当は55万円/坪なのに、47万円/坪と説明します。
そして、
「坪単価50万円以下に抑えました!」
「大手でこの価格は不可能です。広告宣伝費をかけない当社だから実現できます!」
など、 非常にダイナミックにお客さんをごまかします。
施工面積で計算された坪単価を提示されたら、その業者とは縁を切った方がいいでしょう。
3.セールストークパターンによるもの
最後に、営業のセールストークと坪単価の変化について説明します。
本体価格が坪単価60万円の建物があるとします。
この坪単価を説明する方法は、大きく3つに分けられます。
3-1.坪単価60万円と説明するパターン
60万円のものを60万円と説明するパターンです。
何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、実は、3つのパターンのうち、注文住宅の営業として最も難しいのがこのパターンなのです。
日々の食材から、家具、自動車、など高価なものまで、たいていの買い物においては、レジ係やセールスマン(ウーマン)が誰であっても、特に問題はありません。
また、同じ住宅業界でも、マンションや建売などの場合、営業が優秀でも無能でも、家自体は変わりませんから、やはり、営業が誰でも、大差ありません。
これらはすべて、売買契約です。営業は完成品を販売します。
当然、営業・セールスは説明要員の要素が強くなります。
ところが、注文住宅などは請負契約です。営業と打ち合わせ、契約し、工事を行って初めて家が完成します。営業には説明より提案の要素が強く求められます。
すると、営業が優秀な場合とそうでない場合とでは、天と地ほどの差が、出来上がる住まいに生じます。
優秀な営業は、腕利きの設計士でもできないようなヒアリングスキルがあったり(お客さん自身が気づいていないニーズを探り当てる、など)、設計・工事担当や職人さんのモチベーションを高め、上司・幹部を動かすなど、組織をお客さんのために使ったりします。
優秀でない営業が担当の場合、彼(彼女)自身が何のスキルも無いばかりでなく、設計・工事・職人さんも、それなりの仕事しかしません。報告・連絡・相談もあまりしませんから、上司が動く頃には、時すでに遅し、だったりします。
そして、重要な点は、優秀な営業から買おうが、そうでない営業から買おうが、価格は同じであることです。
それを一番知っているのは、他ならぬ営業自身です。
優秀な営業は思います。他の営業から買うより、自分を担当にした方が、圧倒的にお買い得であると。
そうでない営業は思います。自分から買うのは高い買い物であると。
優秀な営業は、小細工など必要ありません。
60万円のものは、60万円と説明すれば良いのです。
3-2.坪単価70万円と説明するパターン
ふっかけるパターンです。この場合、最初に坪70万円と説明しておいて、最後に大幅な値引きが行われいます。
また、単なる値引きではなく、○○キャンペーンだの、○○賞に当選した、など演出が入る場合もあります。
3-3.坪単価40万円と説明するパターン
最初に坪単価40万円と説明し、最後に、「注文どおりに設計したら坪単価60万円になりました。」と説明するパターンです。
最初に安く説明するのは、集客数を増やしたり、お客さんが他社を検討しないようにしよう、という考えに基づきます。
補足.気分による変化
同じ営業でも、気分によって坪単価の説明はしばしば変動します。
< 気分による坪単価変動の一例 >
ある営業は普段、坪単価が58万~62万の住宅を、「58万から62万」、あるいは、「約60万円」「60万円前後」と説明しています。
彼は、週末のある日、住宅展示場に来場したお客さんに坪単価を聞かれ、いつも通り答えました。すると、お客さんの反応は悪く、接客は失敗しました。
次に来場したお客さんからも坪単価を聞かれました。先ほどのお客さんの失敗を考慮した結果、彼は説明の仕方を工夫してみました。
「坪単価は50万円台からです。」
坪単価の活用
以上、坪単価の秘密について解説しました。
このような舞台裏を知ってしまうと、坪単価を聞いても意味が無いのでは?と思ってしまいます。基本的には、参考程度にとどめておいた方が良いでしょう。
しかし、応用すれば、不誠実な住宅会社や無能な営業を見分けるための判断材料に使えます。
ここで紹介した手法を使う業者や営業は、建物・提案に自信がないから、ごまかすのです。
そういう業者とは、すぐに縁を切るべきだと思います。何の足しにもなりませんから。